僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?

「ねぇ、そのロッカーの鍵は?」

「ここに……」

僕はゆっくりと立ち上がるとスラックスのポケットから、ロッカーの鍵を取り出した。

「その荷物、あたしが預かっておいてあげる」

「えっ?」

「だって、今更取りには戻れないし。

あたしがもっと早くにあなたに荷物のことについて尋ねていれば、どうにかなった話かもしれないし。

だから、はい、鍵、渡して」

彼女はそう言いながら、真っ直ぐに手を差し出して、僕に鍵をわたすよう要求した。

「いいえ、これ以上、あなたに迷惑をかけるわけにはいきません。あなたに助けて貰わなかったら、僕は、間違いなく今頃、空腹で行き倒れていたと思います。

だから……、あなたは、僕の命の恩人です。

これ以上迷惑をかけたら罰が当たります……」

そう言った僕の声は、震えていただろうか。

僕は、渡してなるものかと、ぎゅっと掌に鍵を握り締めた。
< 26 / 298 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop