僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
「と、もうひとつついでに確認しときたいんだけど。
ほら、あなたみたいな、路上生活者の人って、たいてい大きな荷物を持ち歩いてるじゃない?
なのに、あなたは見たとこ、殆ど手ぶらよね。
もしかして盗難に会ったとか、そういうこと?」
彼女は多分、本当に僕のことを心配してくれているのだろうと思った。
僕はふっと気持ちが軽くなったような気分になって、つい余計なことを口にしてしまった。
「僕の荷物はコインロッカーの中です」
「えっ?」
彼女は明らかに驚いていた。
「もしかして、あの駅の?」
「数日前の大雨の日、どうしても荷物を濡らしたくなくてロッカーに預けたんです。でも、その後お金がなくて出せなくなってしまって……」
「濡らしたくない物って何?」
彼女があんまり厳しい顔で尋ねるので、僕は思わず答えてしまった。
「カメラです」
「大事なものなんだ」
「……はい」
命より大切なものがある筈もない。
僕は自分の答えに戸惑っていた。