僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?

「正博さんが、あなたの元に戻ろうとした気持ちが、なんとなくわかります」

東条円香は、そう言って複雑な表情で笑った。

「これからは、あなたが彼の戻る場所になってもらわないとね。

あたしは、もう、別の人生を歩み出してしまったから」


歩みだした人生。

今はただ、夫々が信じる道を進むしかないのだ。

命ある限り、ただひたすらに。


幸せは人それぞれ。

巡り合わせの結果でしかない。


(こんな風に思えるのも、君のお陰かな……)


『それが弘美さんでしょ』

私の中には、そう言って笑う彼がいて。



彼に巡り会った幸せを、私はゆっくりと噛みしめていた。
< 268 / 298 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop