君色
「えっと、有沢さん・・・でしたっけ?」

突然岡田さんに名前を呼ばれて、あやうく喉につまらせそうになる。

「・・・は、はい・・」

「お気に召しませんでしたか?」

「え?」

気がつけばみんなはあっという間にケーキを食べ終わり、別のお菓子に手を出していて私だけがケーキをつついていた。

「あ、いえ。あの・・・食べるの、遅いだけなんです・・・」

私は恥ずかしくなって目を伏せると、岡田さんは「良かったです」と笑った。

・・・笑うと、かわいいんだな・・・この人・・・

なんだかまぶしく見えるその笑顔に、私は距離を感じていた。
< 5 / 81 >

この作品をシェア

pagetop