君色
「真秀さん」

「トーコちゃん、お疲れ様」

一通り今日の仕事が終わったあと、皆が帰ったあとのアトリエを私は一人掃除していた。

仕事が終わると私たちは普通の友達の会話をする。

敬語もやめて、他愛ない会話を楽しむのが毎日の楽しみだ。

「真秀さんって本当真面目ですよね~」

トーコちゃんは私が洗い物を始める横で、シンクに寄りかかって私の顔をじっと見つめた。

「そんな・・・私はそれしかとりえがないだけよ」

私が笑うと、トーコちゃんは更に私の顔を覗き込んだ。

「真秀さん、そんなに美人さんなのに、本当に彼氏いないの?嘘ついてない?」

その質問にドキンと胸が弾みあがった。

「い、いないわよ・・・嘘なんかついてどうするの」

最近は忘れかけていた前の会社でのセクハラを思い出す。

気が弱く、抵抗できない私を課長の手が・・・・

思い出しただけで鳥肌がたって、私はあやうくコップを落としそうになってしまった。
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