時計兎
シャーシャー―…

自転車の出す奇声が遠ざかる。



どうやらまいたようだ。



警官への警戒が解け、なにやら視線に気付く。

彩夏の視線だった。


凝視、一生忘れまい、と網膜に焼き付くほどこちらを見ていた。

思わず声が出た。

「…何?」

「な…なんでもないよ!!」

即答し動揺を隠すためか、自分で彼の腕から飛び降りた。


彩夏は向き直り、その想いを気付かれまいと苦笑した。


久遠は鈍感、何も気付かない。
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