さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
「俺は恋とかしたことないから翼が羨ましいよ。」
篠原はそう言って少し悲しそうな顔をした。
初めて篠原の本音を聞いた気がして篠原に向きかえった。
こいつの生い立ちは聞いたことがない。
ただ、他の御陵衛士とは少し振る舞いが違うな、とは思っていた。
まるで、貴族のような…。
一体どんな家で育ったのか知りたい。
「篠原ってさ、どんな家…」
「あっ!俺あんまり長居しすぎると、サボってると思われるから監視に戻るね。」
“家”というワードを出した途端篠原は飛び上がって部屋から出て行ってしまった。