さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
「藤堂さん、永倉さあん!」




怒りは頂点に達した。



「いい加減にしてください!」



プチンとキレた私を見ると二人は慌てたようにそそくさと逃げていった。




「逃げないでください!」




全力で逃げる二人を追いかける。



夜の廊下をバタバタと私たちは走り回っていた。




「うるせぇ!何時だと思ってんだてめぇら!」




ひゃああ!




襖から出てきたのは鬼の顔をした土方さん。




と、止まれない!




「ごめんなさあい!」




その勢いを殺すことが出来ず、見事に私は土方さんに突っ込んだ。



「てめぇ・・・!」



「怒るなら永倉さんと藤堂さんを怒ってください!」




ふるふると怒りで震える土方さんはカッと永倉さんたちの走って行った方向を見たけれど、二人の姿は忽然と消えていた。




「あいつらぁ!」




土方さんはすっかりお怒りのようで大声で叫んだ。




「永倉、藤堂、それからお前!明日三人で屯所内を隈無く雑巾がけだ!」



「えぇ!?」




私もですか!?



でも紛れもなく土方さんに突っ込んだのは私だったので、大人しく諦めることにした。




あの二人、絶対許さないっ!


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