さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
俺はこくんと頷いた。
「そっか。それならあずみがずっとこの時代にいるのを選べばいい。」
「なんでだよ!?」
篠原はいきなりそんなことを言い出すから、思わず声を張り上げてしまう。
「そうしたら翼もずっとここにいてくれるんでしょ?」
篠原は照れくさそうに笑った。
その表情があまりにも悲しげだったから、何もいえなくなる。
「翼が来てから楽しいんだ。一人じゃなくなった。」
篠原は本当にさらりと言い流した。
注意して聞かなければ気にも止めないくらいに。
だけど、俺はその言葉と表情をしっかり覚えている。
“一人じゃなくなった。”
篠原はそう言って顔をゆがませた。
なんでそんなに悲しそうに笑うんだ?
それも家の関係なのだろうか?
篠原の家柄はずっと気になっていたけれど、それに触れるのを嫌がっている様だったから聞かないようにしていた。
一体どんな事情があるんだろう?