さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―

「私は150年後の未来からきました。」




真っ直ぐ近藤さんの目をみる。





「なんだと?」




近藤さんは驚いた様子で目を見開く。




「確かにお主の身なりや話す言葉はこの時代には無いものだ。だが、どうしても信じがたい。」




幹部の人達の様子を見ると、やはりまだ変な物を見る目で私を見ていた。




「何か証拠になる物はないのかね?」




証拠・・・。




私は歴史は詳しくないから、この人の過去はこうだとかそういう証拠はわからない。




あ!




一つだけ思い出した!





私はくるりと土方さんのほうに向きを変える。




「梅の花。」




土方さんの顔色がみるみる青ざめていく。




「一輪咲いても梅は梅。」




これは、土方さんが残した俳句として現代まで残っていた。




友達とそんなの当たり前じゃん、と笑った俳句だから今も覚えていた。




「はははっ!」



沖田さんが腹を抱えて笑い出す。




他の幹部の人はきょとんとしてこちらをみているけど。




「てめぇ、なんでそれを!?」




土方さんは怒ったような照れているような顔をした。





「私のいた時代まで伝わっていましたよ。」




私の言葉に沖田さんは再び笑い出す。





沖田さんの様子を見るときっと沖田さんもこの俳句を聞いて馬鹿にしていたのだろう。




「これで信じて貰えましたか?」




沖田さんと土方さんはそっと頷く。




ほっとして胸をなで下ろす。




「待て柴崎くん。それでは私達はまだ納得出来ん。」




近藤さんが口を挟む。




確かにこれでは他の人への証明にはならない。


 
どうしよう・・・。




何かないだろうかとバックを漁ってみるけれど、これといって決定的な証拠になりそうなものはない。



「!」




これだ!



手に硬い感触を覚えて即座にそれを取り出す。


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