さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―


翼はうまくやれているのかな?




会いたい。



今すぐ。




会いに行けない距離ではないし、まだ見張りがいる気配はしない。




腰をスッと持ち上げる。




ここから逃げて翼に会いに行こう。




そして、みんなが待つ未来へ一緒に帰ろう。




襖の取っ手に手をかける。




「一之瀬さん。」




「ひっ!」




襖がガラリと開く。  




ヤバいヤバいヤバい!



そこには少し驚いた顔をした山南さんが立っていた。




「ど、どうしました?」




出来るだけ平然を装って尋ねる。





逃げようとしたのがバレたら今度こそ命はない。




「仕事を、手伝ってもらおうと思ったんですけど。」




けど、なんだろう。




やっぱりバレたかな?




冷や汗が出てくる。




逃げようとなんてしなきゃよかった。




「行きましょう。ついてきてください。」




あれ?



見逃してくれた?





山南さんはいつも通りの笑顔で笑っていた。




気づいていないのか、見逃してくれたのか。




とにかくもう脱走なんて考えない方がいい。




私は山南さんのあとを追いかけた。




< 47 / 308 >

この作品をシェア

pagetop