さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
翼はうまくやれているのかな?
会いたい。
今すぐ。
会いに行けない距離ではないし、まだ見張りがいる気配はしない。
腰をスッと持ち上げる。
ここから逃げて翼に会いに行こう。
そして、みんなが待つ未来へ一緒に帰ろう。
襖の取っ手に手をかける。
「一之瀬さん。」
「ひっ!」
襖がガラリと開く。
ヤバいヤバいヤバい!
そこには少し驚いた顔をした山南さんが立っていた。
「ど、どうしました?」
出来るだけ平然を装って尋ねる。
逃げようとしたのがバレたら今度こそ命はない。
「仕事を、手伝ってもらおうと思ったんですけど。」
けど、なんだろう。
やっぱりバレたかな?
冷や汗が出てくる。
逃げようとなんてしなきゃよかった。
「行きましょう。ついてきてください。」
あれ?
見逃してくれた?
山南さんはいつも通りの笑顔で笑っていた。
気づいていないのか、見逃してくれたのか。
とにかくもう脱走なんて考えない方がいい。
私は山南さんのあとを追いかけた。