Vrai Amour ~妃奈の場合~
初めて出会った日。
大勢の親戚たちを目の前にして、妃奈は泣いてた。
たぶん、こんな大勢の人の前に出るのは初めてだったんだろう。
僕も多少は緊張していたけれど、妃奈よりはお兄さんなんだからと泣きそうになるのを我慢していたんだ。
「あら、妃奈ちゃん、はぐれちゃったのかしら」
母が泣いている妃奈に気づいて、僕の手をひいた。
「恒輝、桐島妃奈ちゃんよ。もしかしたら将来恒輝のお嫁さんになるかもしれないわ」
母はそう言って妃奈を僕に紹介した。
だから僕は泣いてる妃奈を見て
早く大人になって、妃奈ちゃんを守らなきゃ
そう思った。
帰国子女だった僕はまだ日本語がおかしくて泣いてる妃奈になんて声をかけていいのかわからなかった。
だから、無言で手を差し出したんだ。
海外では握手が普通だったから、きっと握り返してくれるだろうって思って。
妃奈はちゃんと握り返してくれた。
泣き止んで笑ってくれた。
僕はこのとき、この子を絶対お嫁さんにするんだって決めたんだ。