Vrai Amour ~咲子の場合~
「お父様、私、桐島家の一人娘として桐島の家を守っていかなければいけないってことはわかってるつもりなの」
「咲子・・・すまない」
お父様は申し訳なさそうに頭を下げた。
「・・・でも、咲子。あなた、好きな人が・・・」
お母様が心配そうに口を開く。
だけど、私はそれを遮るようにして言った。
「ちゃんと帰って来ます。帰ってきたらあの方との結婚進めてください」
私はきっぱりとそう言って、自室へと戻った。
明日はもうアメリカに発たねばならない。
しかし、お父様も相当言い出しづらかったのだろう。
ベットに座り込むと思わずため息が漏れる。