ルームシェア
おばさんはチラチラとあたしを見ながら、花木くんと少し話してから去っていった。
「あの人、ここのアパートの大家だから、仲良くしとけよ?」
――ガチャ
扉を勢いよく開くと同時に、そんなドスな声が聞こえた。
あたしは「はーい」と小さく返事をして、花木くんに続いて部屋の中に入る。
「おじゃましまーす。」
玄関から一つ扉に入ると、綺麗な真っ白な部屋が現れた。
独り暮らしにしては割りと広いような気がする。
それに、生活用品もちゃんと揃っている。
黒のソファとテーブル。
その下にひかれているのは、ふさふさとしたクリーム色の絨毯。
物は必要最低限で、すごく綺麗。
男の人の一人暮らしって、こんな感じなのかな?
「な~にジロジロ見てんの?」
バシッ、と後ろから軽くチョップを食らった。
「こっち来て。」
と、促された方にいくと、これまた必要最低限な物しか置かれていない六畳ほどの部屋。
だけど、ここは、なんだか生活感がある。
もしかして、花木くんの部屋?
「俺の部屋はあっちだから、ここは好きに使っていいよ」
違った。
じゃあ、気のせいかな。
あたしは、とりあえずリュックをおろし、一通り見回した。
使ってないって言ってるけど、ベッドが置かれている。
本とかも置かれてるし、クローゼットの中には、服も入ってる。
もしかして、花木くんの部屋の方が狭いのかな?
なら、あたしがそっちを使った方が…。
チラッと花木くんの部屋を見た。
「俺の部屋は入んないでね?」
ドキッ。
あたしの心をまるで読んでいたかのような声に、あたしは肩を鳴らせた。
「もちろん。」
なんて、笑いながら頷いた。