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「香織、これ合鍵」
――ピクッ
「え、あ…うん」
チャリン、と音を立てながらあたしの手に投げ込まれた。
鍵は2本ついている。
「家の鍵と部屋の鍵だから無くすなよ?」
「あ、うん…」
なんとも歯切れの悪い返事。
てか、今、何て言った?
あいつ、あたしのこと“香織”って呼んだよね。
なんで?
「そりゃあ、俺ら、付き合ってるからだよ」
「あれ、あたしまた、声出てた?」
「あぁ。お前さ、その癖直せよな」
恥ずかしいー!!
昔から独り言だけは酷いんだよね。
特に考え込むと、無意識のうちに声が漏れてるし。
「てか、花木くんって、あたしのこと好きなの?」
だから、付き合ってって、家を理由に言ってるとか?
「そんなわけないじゃん。」
あ、ですよね~。
「まぁ、ちょっとした理由があるんだよね。
あと、ここの家賃を払うのに、2万はほしいなって」
よくわからない。
けど、それ以上は追求してもしょうがない。
きっと彼は答えてはくれないだろうから。
だからあたしは、ニコニコと見せる嘘臭い笑みにため息をこぼして見せた。