私の鬼畜な天使様
『ち、ケルベロスか』

首を絞める指が緩められ咳き込む私にちらり、と黒い犬…ケルベロスは心配そうな視線を向け唸り声を上げた。

『本当に堕天しても良いのですか?』

『いいよ、したらお前んとこの魔王の世話になるし』

『貴方様のような方はマスターは受け入れるつもりはさらっさらございませんっ!しかもこの蜜柑様を…救う義務を背負った人間を殺めようなどと…貴方様は馬鹿ですかっ!』

びりびりと部屋中に響きわたる怒声にフェイトはそっぽを向いていてばつが悪そうに唇を尖らせている。ケルベロスの口元からは白い煙がスモークみたいに流れて出てぐるるるる…って唸り声がちょっと怖い。

『蜜柑様』

『は、はい』

穏やかな真紅の瞳が私を見据える。それでも思わず正座しちゃったけど。

『この駄目天使、フェイト様は貴方を救いに来た者です』

『は?』

『駄目とか言う…『お黙りなさい』

フェイトの抗議をぴしゃりと制しケルベロスは言った。

『蜜柑様の闇をきっとこのフェイト様は払拭して下さるでしょう。なにせ上級天使ですから』
上級、にわざと力を込めた言い方にフェイトが眉間にシワを寄せる。

『私の…闇?』

『はい』

何の?と反射的に聞きそうになったけど言葉は出なかった。その真紅の瞳はきっと私を理解している、けれとあえて間接的な言葉を選んだのだ。

『フェイト様』

『あんだよ』

『あんまりおいたが過ぎるとマスターがお仕置きしに来ますのでそれをお忘れにならないよう。ご自身の使命を忘れぬよう、堕天寸前なのもくれぐれもお忘れ…』

『うるせえ、魔王がなんだよ。帰り打ちにしてやるっ!』

『ほう…』

『う…っ』

ケルベロスがうっそりと笑う。白く尖った牙がずらりと見えその瞳の奥で黒い影が揺らめいた。

『その言葉もお忘れなきよう』
そしてその言葉を最後にケルベロスは消えてしまった。フェイトは明らかにやっちまった感丸出しで固まっている。

『とりあえず説明、して。なんか私にも知る権利あるみたいだし』

『の、前に酒かなんかねーの?』

『天使なのに…お酒?』

『人間がよく言うじゃねーか「飲まなきゃやっつらんねぇ」ってな』

『はあ…』

そんなのどこで仕入れたんだか。さっきまで凶悪だったのに今は捨てられた子犬みたいにしょんぼりしてる。

変な天使、だな。

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