星の見えない夜
それなのに。

俺はいつのまにか家の外にいた。


たぶん彼女にむりやり連れ出されたのだろうが、よく分からない。

気が付いたら背後で玄関の扉が閉まる音がしたのだ。

不本意だ。

また俺の多忙さが増す。


「離せよ。
俺は忙しいんだ」


夜の冷気はすさまじい。

あまりの寒さに体中が総毛立つ。

空気が凍らないのが不思議なくらいだ。


「いいから、ほら」


彼女は近所の公園へ続く道路を歩いていく。


星も見えない濁った街の空。


闇ばかりが目立つ。



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