彼女志願!
穂積さんが私の肩を抱き寄せていない、左手を振り上げていたから。
左手、手の甲で、ユズさんの頬をはったんだ。
「ほ、ほ、穂積さん……?」
穂積さんが女性に手を挙げた。
ショックというよりも(いや、すごいショックだけど)信じられなかった。
だって穂積さんがいくら意地悪だからって、女性に手を挙げるひとじゃないって思ってたのに……。
理性を絵に描いたような、常に落ち着いた穂積さんが、感情にまかせて人に手を挙げるなんて信じられなかった。
そうやって、硬直する私と、同じように信じられないと目を真ん丸にしているユズさんの視線を受けて、穂積さんは軽く左手を振り「ハァッ……」と短くため息をつく。
「ユズ。僕は自分の物を取られるのが、傷つけられるのが一番嫌いなんです」