アタシの人生に華が咲く
『あったりまえよ~。だから鯛焼きもしばらく買いにこれないわ』
と、おおげさなリアクションで、悲しげに出てもいない涙を拭うフリをしながら、袋の中身を確認する。
『焼きたてよね?』
『もちろん』
『んふふ、またねぇ』
と、満面の笑みで手を振りながら、のぶ世さんは帰っていった。
私は窓から顔を出し手をふりかえしてから、小さくため息をついて見送った。
マチコさんといい、のぶ世さんといい、かわいいおばさんたちだな、なんて思ったら失礼だろうか。
その後夕方になると、学校から帰ってきた近所のチビっこたちが団体でやってきた。
一日のうちで、一番店が騒がしくなるときだ。
『おだんご姉ちゃんラムネ1本!』
『ねーねーカスタードの鯛焼きちょーだい!』
『おだんご姉ちゃんバンソコ貸して!』
チビっこたちがさっきから連呼している“おだんご姉ちゃん”とは私のこと。
いつも髪型がおだんご頭だからだそうだ。