アタシの人生に華が咲く
―――午後3時。
のぶ世さんは時間キッカリにやってきた。
『鯛焼き貰いにきたわよぉ』
今朝とは違い、店の方から入ってきたのぶ世さんは上機嫌だ。
『なんか良いことあった?』
私が鯛焼きを袋に詰めながら聞くと、
『わかる?実はアタシね、明日からジムに通うの』
『へぇ、ジムねぇ……できるの?』
のぶ世さんは、浅川園の夫婦と同級生の63歳で、失礼だけど体型は典型的おばさんタイプだ。
『できるわよ!簡単なストレッチとか軽い運動だもの。それにね、田端俊二似のインストラクターがいるのっ』
なるほど、それで機嫌がいいわけか。
のぶ世さんは、流行りものが大好きなミーハーである。
ちなみに“田端俊二”とは今もっとも人気のある若手俳優だ。
『だったら今回は続くかもね。はい、カスタードとあんこ二つずつ』
のぶ世さんは前にもダイエットを兼ねて、社交ダンスがしたいと教室に通ったけど1ヶ月ともたなかった。