手を伸ばせば、届く距離まで。



「なぁ、圭。お願いだから、答えてくれ」


…いや、もう答えは知ってるはずだ。


真樹の声には「そうなんだろ」という思いがある。




「……好きだよ、ずっと前から。真樹が、好きになるよりも、前から」




正直。


これが、俺の正直だよ。


真樹は知らないだろ。このつらい悲しみ。


良いじゃないか。


華織は、真樹だけが持てる人間になったんだから。



< 30 / 557 >

この作品をシェア

pagetop