手を伸ばせば、届く距離まで。



華織は、空気を読まずに素直に笑う傾向がある。


俺、何か不愉快なんですけど…。


「ごめんごめん。―――ほら、はい」


不意に伸ばされた手。


弱々しくもあるその手は、俺の頬に触れた。


濡れた手の指が、泡を救う。


心臓が爆発するかと思った。


なんとか心臓を落ち着かせるのに精一杯で、あわてて顔を背ける。


…やっば。



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