私と彼の一週間
「・・・・あ・・・・・」



・・・・どうしてだろう。
颯人はただ、良心で私の携帯を拾ってくれただけなのに。
どうして私は・・・・・颯人の頬を叩いたのだろう


「・・・ごめん・・・・颯人・・・・」


「・・・ううん。鈴ちゃんの言うこと聞かなかったのは俺だから」


“気にしなくていいんだよ”
そう言って、私に携帯を渡した


「たっだいま~!」


颯人は本当に気にしていないらしく、家に入ると元気だった
でも、私の気分は晴れなかった。
1日目にして、颯人を叩いてしまうなんて。

きっと、この1週間は厄日になる。

そんな気がした。


「鈴ちゃん、早くご飯作って!」


「・・・・うん」



颯人は、ソファに座ったり部屋をうろうろしたりと落ち着かない様子だった。
炊飯器は買ったものの、一度も使ってない。
だから、コンセントすら刺さってはいない。



「・・・・鈴ちゃん、ご飯炊ける?俺がやろうか?」



「・・・・・自分で出来る」



一度、自分で決めたことは最後までやり遂げないと嫌な性格な私。
こんなの、お米洗ってボタン押すだけでしょ。
誰でも出来る。


・・・・・・・・・機械音痴な私でも。


お米を洗って、水を入れる
“炊飯”と書かれたボタンを押すと、音が鳴り、ゴーッと音がしてご飯が炊きだされた。



「ふぅ・・・・・。これでいいのかな・・・・」


「お、出来たんだ。ご飯は、炊けるのを待つだけだね~」


いつの間にか、キッチンに来た颯人
顔を見ると、頬が少し腫れていた。
その赤さを見ていると、自分がどれほどの力で叩いたのかがわかる。

・・・・颯人は私の携帯を拾ってくれただけ。
颯人は何も知らない。



・・・・・・・私の携帯の事は、誰も何も知らない。
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