ホストーカー 【完】
その時だった。
「グスッ……グスッグスッ。」
物陰から何か不気味な音がする。
「誰か居る…?」
「あっ…」
迫って来ていたコウさんを押し退けて、私は物音が聞こえてくるカウンターテーブルの裏側へと恐る恐る近付いた。
「れ、麗羅…!?」
そこに居たのは一ヶ月ぶりに見た何の変化もない麗羅の姿だった。
「うわぁーーん!美麗ちゃぁん!!」
そして、麗羅は鼻水を垂れ流したまま私に抱きつこうとしたので、ヒラリとそれを交わした。
「汚い…、……バカ。」
私の悪態にも相変わらず、目を輝かせる麗羅。
「…もっと罵倒してください!!」
むしろ、アンコールを貰った。
口には出してやらないけど、心の中で『バカ』ってもう一度言ってやった。