そこにある宇宙
 そんな疾風が、戦うためだけに不可能すら超えようとしている。

「自分の世界にいられないことは、絶対不幸なことだ。いつかは彼女を向こうに送り返してやらなきゃならない。だけど、その前にやるべきことがある」

 カリナの世界で、非道の限りを尽くすもう一人の龍太郎。

 そして、その配下。

 次元を超えてきたカリナのために、疾風は彼らを倒そうとしている。

「話して分かる相手じゃないだろうからな。ぶち倒して取り押さえるしかないだろう」

 そう言い放つ疾風の表情は、いつもの飄々としたそれではない。

 無機質な、冷たい顔つき。

 ルイは知っている。

 疾風が優しさと同じくらい厳しさを持ち合わせていることを。

 ルイ自身、受験を間近に控えて撮影を続けるべきか悩んで疾風に相談した時、素っ気なく突き放されている。

 始めは冷たい奴だと思ったが、すぐに真意に気づいた。

 将来を左右するかも知れない決断を自分で下せないようでは、夢を語る資格などない。

 それを諭すのではなく、疾風は態度で示してみせたのだ。
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