そこにある宇宙
「こんなもんなくてもこっちの龍太郎とは互角に戦えるが、向こうで通用するかどうか…」

 最終調整を終えた幾つかの装備を確認しながら、疾風の表情が険しくなる。

「行くんでしょ、それでも」

 唐突に、背後から声がする。

 開け放たれたドアの傍らに立つ、ピンクのブルゾンを羽織った声の主、神逆ルイは寂しげな笑みを浮かべる。

「あんな話聞いたら、疾風が黙っていられるわけ、ないもんね」

 本心を言えば、命の保証さえない次元転送などさせたくはない。

 それ以上に、疾風が手の届かない所へ行ってしまうことが、ルイには耐え難い。

 そして、ただ物を作ることが好きなだけの疾風が、殺傷を目的にその頭脳を駆使することが悲しかった。

 例え、相手が異世界の住人であっても。

 思いつきだけで、役に立つのか疑わしい代物を作ってしまう。

 そんな子供っぽい疾風を見ているのが、ルイは好きだった。
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