アラサーだって夢をみる
料理が運ばれて来てセッティングをしてもらっていると、三神さんがキッチンからクーラーに入ったボトルとグラスを二つ持ってきた。
(うわ)
そうじゃないかと思ったけど、やっぱり高額で有名なシャンパンだ。
おまけにラベルの年代がかなり古い。
(あれ、開けるんだよねぇ)
こんなとこで飲んだらいったい幾らになるんだろう。
でも三神さんはご機嫌に栓を抜いている。
ポンッといい音がして、爽やかで上品な香りが広がった。
(まあいっか)
滅多に飲めるものでもないし。
基本的に楽天家の私は、値段は忘れて楽しむ事にした。
「じゃ、乾杯しようか」
どうみてもバカラのグラスに三神さんがシャンパンを注いでくれる。
「あ、うっかりしてたけど」
「名前何て言うの?」
そういえばそうだ。
名乗りもしていない事に今頃気付いて、咄嗟に姓ではなく沙理ですと答えた。
「沙理さんか」
少し間があり、三神さんが小さく咳払いをした。