アラサーだって夢をみる


「ありがとうございます」

素直にお礼を言った私に満足したらしい。
三神さんは、わかればいいけど、と残りのサラダを食べ始めた。


こんな三神さんを知る事が出来て本当に幸せです。
でも私は帰らなきゃ。
朝が必ず訪れるように、夢も必ず醒めるのだから。


私は完全に平常に戻っていた。

もし仮に三神さんが本気で私を好きなのだとしても、次なんかあり得ない。
そのくらいの事はわかってる。
本来なら、絶対に会えるような人じゃないのだから。

「次は5月なら来れると思いますけど」

毎年GWに大きなイベントがあるから、と説明した。

勿論この数年参加していない同人誌即売会のことだけど。
夏コミだと遠すぎるから、それくらいを設定するのが丁度いいし。

「ちょっと先だけど仕方ないね」

スケジュール調整しておくからねと三神さんは微笑んでいる。

嘘をついてごめんなさい。
でも、せめて夢は夢のままでいたいから。

どんなに祈っても時計の針は止まってくれない。

出発の時間はすぐそこまで近づいていた。




☆-☆-☆-☆


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