アラサーだって夢をみる


到着ロビーに友樹が待っていてくれた。
どんな顔して何を言おうかと不安だったけど、顔を見たら駆け寄っていた。

「おかえり」

「ただいま」

「お前、なんか痩せてるじゃん、だいじょぶか?」

「そう?」 

荷物を持ってくれて、お土産の紙袋を覗いて嬉しそうにしてる。 
 
「ちゃんと食ってたの? なんか食って帰る?」

「大丈夫。早く帰りたいよ。ぷう太は?」

「全然平気だったよ」

見慣れた車に乗るとぷう太達の匂いがする。

「横になっとけよ」   

ありがと、と言ってシートを倒して一息つく。

(あ、買い物行かなきゃいけないかも)

「友樹、買い物しないと何もない?」  

「昨日、お母さんが行ってくれてたよ」

「そう」

ふいに額に手のひらが触れた。 

「まだ熱いじゃん。どうせ興奮して知恵熱出したんだろ」

私、何かイベントあるとその後熱出すもんね……。

「うん」

「楽しかった?」

「うん」

「本物の三神さん、ちゃんと見れた?」 

「うん、ばっちり見れたよ。かっこよかったよ。生声も素敵過ぎ」

そっかイベント行ったんだった。
友樹の横顔を見てるとぼんやりあの人の顔が浮かぶ。
ああ、私、ちょっと疲れてるみたい。

着くまで寝るねと目を閉じて、幻影を頭から追い出した。

 

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