愛を待つ桜
真だけじゃない。桜だって紫だって、いずれ誰かに守られ、そして大切な誰かを守るときが来るんだろう。

そしてそれは悠じゃない。

悠は少し寂しい気持ちになりつつ、よく考えから彼自身も、両親や弟妹以上に大切な誰かが出来るはずなのだ。



「僕……美月ちゃんのこと守ってあげたいな」


ちょっと恥ずかしそうに真は言う。


「藤原の? 1年だけで転校したんじゃなかったっけ?」


1年のとき『お嫁さんにする!』と大騒ぎしていたが、2年になる春に父親の都合で転校してしまった同級生の名前だ。悠は随分久しぶりに聞いた気がする。


「去年の春にまた戻ってきたんだ。美月ちゃんの家は結構ゴタゴタしてるからさ。助けてあげたいけど……僕より成績は良いし、足も早いんだよなぁ。それに、結人としょっちゅう一緒にいるし……」


まさか、7つも年下の弟から恋の相談をされるとは思わなかった。

悠は軽く落ち込みながら、


「まあ、その、なんだ……がんばれ」


真の肩を叩きながら、『自分も少しは頑張れ』と励ます悠だった。
 

このとき、悠の心の片隅に弟を惑わす“美月ちゃん”の名前が小さく刻み込まれ――。


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