愛を待つ桜
「あの……ね、何て言ったらいいのか……あなた達に話があるんだけど」


食事も終わりかけた頃、母が言いにくそうに口を開いた。


(まさか!?)


俄かに、悠の胸に既視感《デジャビュ》が浮かび上がる。


「実は……今年で結婚して丸15年になるんだけど。この夏休みに、お父さんがふたりきりで旅行に行こうって言ってくれて。お母さんたち新婚旅行に行ってないのよね。駄目……かな?」


悠はホッとしつつ、ふたりきり、という点に引っ掛かった。


「僕はいいけど……紫は?」

「お兄ちゃんは受験勉強があるからひとりでいいとして、3人とも、静叔母さんのところで預かってくれるって言うんだけれど」

「ゆかり、お兄ちゃんと一緒がいい!」


紫が真っ先に声を上げた。

すると、


「あ、じゃあ、私も家にいるわ。お兄ちゃんが一緒なら平気だし」


桜も言う。


「僕だけ叔母さんの家に行っても仕方ないし……。4人で留守番してるよ。いいよね? 兄さん」


あっさり真も同意した。


< 267 / 268 >

この作品をシェア

pagetop