ランデヴー
こんな風に第3者のことで揉めたのはこれが初めてのことだったし、私達の気持ちは擦れ違ってなんかいない、そう思っていた。


ちゃんと話せばわかってくれる。


そう信じていたのは、私の自惚れだったのか。


陽介は、私のたった1度の過ちすらも、許してくれないのか。



あまりの出来事に、呆然と陽介の顔を見つめる私の目からは涙が溢れた。


ぽたぽたと、それは音もなく流れていく。



「な……んで? 何で……そんなこと言うの? 私は……私……」


「ゆかり」


陽介はすっと手を伸ばすと、私の頬を濡らす涙を拭った。


生温い風が、陽介の手が離れた頬をするりと撫でる。



「俺は別に怒ってる訳じゃない。いつも会う度に思って、でも言えなくて。辛くてうやむやにしていたことだ」


陽介はこんな時でも、優しい。


穏やかな瞳の中には怒りは感じられず、そこにはまだ愛情が感じられた。
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