ランデヴー
だが内容が内容なだけに、ぐっと声量を絞りひそひそと先を続ける。



「いえ、確かに花火大会には一緒に行きましたが……」


『ほぉほぉ』


「ただそれだけです、ただの同僚です」


私の釈明を聞き、電話の向こうで明らかに残念そうな声で『そうなんですか……?』と呟く小原さん。


いや、そこで落胆しないで下さい、と心の中で突っ込む。



「そうです。だから、あまり面白おかしく触れ回らないで下さいね……?」


小原さんは社内の恋愛事情通なだけに、その拡散力も半端ない実力を持っていることは確かだ。


私はやんわりと牽制した。



『そっかー、そっかそっか。残念ですが、わかりました。まぁそういうことだったら、噂なんてすぐ消えると思いますよ。私も火消しに協力しますから』


困り果てたような私を可哀相に思ったのか、小原さんは嬉しいことを言ってくれた。



「有り難うございます、助かります!」


『いえいえ、なかなか楽しめましたから』


本気で頼み込む私にクスッと笑ってそう言う小原さんは、冗談じゃなく楽しんだのだろう。


その声は朗らかだった。
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