ランデヴー
『じゃぁ、本題に入りますね』


ふと楽しそうだった小原さんの声が急に真面目なトーンに切り替わり、その変わり身の速さに私は少し驚いた。



小原さんは仕事もできるし、話をしていても面白いし、私の憧れでもある。


彼女と仕事ができることは嬉しいと同時に、私はその敏腕っぷりについていくのに必死だった。



でもそれは、仕事ができないと見切りを付けられないようにと常々向上心を持てるし、そんな風に思わせてくれる小原さんに私は尊敬の念すら抱いていた。


そんな小原さんが切り出した本題に、私の神経にピリリと緊張が走る。



『請求の件で1件わからないことがあってお電話したんです』


「あ、はい」


それは調べればすぐにわかる内容で、私はテキパキと対応して電話を切った。


そつなく上手くこなせたことに、安堵の息を吐く。



――こうして仕事をしている時は、そのことに没頭することができた。


でも一息吐くと、さっきの陽介との出来事が思い出され、私の心は真っ黒な雲にどんよりと覆われたかのように暗くなる。


うっかり出そうになる涙を堪え、私は1つずつ集中しながら仕事を片付けていった。
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