ランデヴー
節電の為に20時を過ぎると照明が落とされるように設定された廊下は、薄暗くて少し怖かった。


そんな中、トイレに向かう手前にある給湯室からぼんやりと光が漏れ、ボソボソと音が聞こえることに気付いた私は、思わずビクリと肩を震わせて足を止めた。


それがただの人の話し声だと気付き、私はホッと胸を撫で下ろす。


そして、こんな時間にこんな所で話すんだったら早く帰ればいいのに……と思いながらその前を通り過ぎようとした時。



「何で坂下さんと行ったの?」


と、不意に私の名前が耳に飛び込んできた。



駄々をこねるような甘いこの声は……前田さん、だ。


必然的に、私の足はピタリとその場に止まってしまう。


何をどう考えても、私と倉橋君が花火大会に行った時の話だと思った。



こんな誰が聞いているともわからないような場所で私の話をするなと思いつつも、その相手が倉橋君でないことを祈りながら息を潜める。


給湯室、とは言っても流し台やゴミ箱が設置された空間がその場に広がっているだけで、扉はない。



「私が誘った時は行かないって言ってたじゃん……。あの人となら、行くの?」


縋るような声色でそう問い掛ける前田さんに、胸がドキッと震えた。
< 127 / 447 >

この作品をシェア

pagetop