ランデヴー
「香川さんと……」


「……っ」


陽介の名前が倉橋君の口から出た途端、ドクンと全身の血が逆流する程の衝撃が体中を駆け巡った。



え……?
バレ……てる?


そう考えながら、そんなはずはない、と思い直す。



あの時だって上手くごまかせていたはずだし、倉橋君も特に気に留めた様子はなかった。



「何の、話?」


唇が微かに震え、声が掠れたのがわかった。


それでも私はできる限りの平静を装いながら、倉橋君の瞳の中に真意を探る。



胸の中に広がる不安に負けまいと、私は食い入るように彼のことを見つめていた。


でもいつになく鋭く私を見据える倉橋君のその目には、怯えたように彼を凝視する私の姿しか映らない。



「俺……知ってますよ。あの時……香川さんの唇、坂下さんのリップが残ってましたから……」


心臓が止まるかと思った。


あの時、とは。
会議室で私と陽介が2人きりになっていた時。
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