ランデヴー
思わず、自分の唇をするりと撫でる。


今日も私の唇には、その時と同じ色のリップグロスがテカテカと光っていることだろう。


これは最近私が気に入って使っている色だった。



倉橋君の突然の登場に驚いてお互いすぐに離れたけど……あの時から既に気付いていたということなんだろうか。


私と陽介の関係に。


知ってて私に彼氏の話を白々しく聞いてきたり、花火に誘ってきたということ……?



「それに……今日泣いてたのって、香川さんに何か言われたから、ですよね?」


私の肩が、自分の意思とは関係なくビクッと揺れた。



倉橋君のその瞳に全てを見透かされているようで、私の胸には羞恥にも似た感情が一気に込み上げてくる。


彼の前では、自分のしていることは恥ずべき行為なんだと指摘されているように感じたのだ。



「すみません、黙ってて……。でも、どうして坂下さんが不倫なんて……」


「…………」


何も言葉を返すことができなかった。
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