ランデヴー
倉橋君の口から出た『不倫』という言葉はあまりにも彼に似つかわしくなくて、この背徳行為が酷く人道に外れたことなんだと、戒めの力さえ感じる。



どうしよう……どうしたらいい?


沈黙が続く。



私はまるで金縛りに遭ったかように微塵も体を動かすことができず、その場に座り込んでいた。


握られた手を振り解くことができないまま。



「彼が……好き、だから」


そんな2人の間に流れる重苦しい沈黙を破ったのは――私だった。



倉橋君の真っ直ぐな瞳が痛くて……胸に突き刺さって、答えずにはいられなかった。


私を咎めるようなその眼差しに、自分の気持ちを正直に話すことでしか、私は応えることができないと思った。



そして、私の口からこぼれ落ちた「好き」という言葉。


これが私の、ただひたすらに真摯な気持ち。



これがなければ、私は陽介とこんな関係を続けていない。


ただ彼が、好きなのだ。


狂おしく、例え苦痛を伴ったとしても。
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