ランデヴー
人は貪欲な生き物だ。


1度幸せを享受してしまうと、もっと、もっとと、求めてしまうものだ。



そんな自分の気持ちが愚かでそして寂しいものだと知りながらも、私はその幸せを手放したくないと願ってしまう。


あの楽しかった日の記憶が、今でもこの胸の中にありありと思い出されてしまうから。



「はぁ……」と、私は今日何度目になるかわからない溜息を盛大に吐き出した。


そんな私の背後から「幸せ逃げるぞー」と、声が聞こえてきた。


振り返らなくても、そのおどけた口調で誰だかわかる。



「何、なんか嫌なことでもあった?」


言葉は心配しているようだが、その実弾んだような声は何だか楽しそうでもある。


声の主――佐原さんは、ドカリと私の隣に許可なく腰を下ろした。



「興味本位で聞くのはやめて下さい」


「失礼だなぁ。部下を心配してるんじゃないか」


「心配……ねぇ?」


そう呟き頬杖を突いて目を向けるが、どう見てもただのニヤけた顔にしか見えない。
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