ランデヴー
当の本人でさえこれなのに、自分の夫とこんなことをしていた浮気相手を目の前に、響子さんは怒りが湧かないのだろうか。


普通ならもっと取り乱すものなのではないのか。



……そう、私がずっと感じていた妙な違和感の原因はこれだ。


彼女からは怒りが感じられないのだ。


怒る……というか、それどころか少しの不愉快な気配すらない。



何故……?


やはり、彼女は陽介を愛してはいないのか?


冷め切った夫婦なのか?



私は眉を寄せてそんなことを考えつつ無言でバインダーを封筒にしまうと、静かにテーブルを滑らせるようにして響子さんにそれを返した。


そんな私の様子を、彼女はただじっと見つめている。


その視線がたまらなく嫌で、私は目を伏せた。



「私、子供が欲しいんです。やっぱり夫の子供が欲しい。……正直少し前までは浮気くらい仕方がない、って思ってました。彼は私にこんなに尽くしてくれてるんだから、それくらい目を瞑ろうって。でも……子供ができるとなったら、話は別でしょう?」


再び口を開いた響子さんのその言葉に、私は愕然とした。
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