ランデヴー
視線を元に戻すと、同じように外へと目を向けていた響子さんは窓の外を見たまま、変化のない表情で話を続けた。



「痛くて……色んな所が痛くて、私もう死んじゃうのかなって。あの時の痛みは今でも忘れられないんです。自分の体が自分のものじゃないみたいだった」


「…………」


「病院で治療を受けたけど、骨折とかそんなものじゃなくて……粉砕してました。それに、運悪く何かに引っかけたみたいで……」


響子さんはそう言うと私へと視線を移し、額を覆っている前髪を上げて見せた。


そこには、左のこめかみから中央にかけて、うっすらとそれとわかる傷が残っていた。


私は思わず深く眉を寄せる。



「目立たなくすることはできるけど、全くなかったことにはできないんです。足だってリハビリのお陰で歩けるようにはなったけど、左右の長さが違ってしまってて……もう普通には歩けない」


私は響子さんの話を血の気が引いているだろう顔で、ただただ黙って聞いていた。


こうして座って話しているだけだと、響子さんは普通の人の体と全く変わらないように見えた。
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