ランデヴー
――会って、何を話すのだろう。


私が今話さなければならないことなんて、別れ話しかないのに……。



私は……響子さんと約束したのだ。


『もう陽介とは会わない』と。


あの時の辛い気持ちを、決意を、忘れた訳ではない。



私は気付くとその場から1歩ずつ後ずさり、トンと後ろの壁にぶつかった。


ダメだ、やっぱり今会ってはいけない。


気持ちを止められなくなってしまう。



そう思い直した時、ポンと音を鳴らしてエレベーターが到着した。


その場を離れて家に戻ろうとしていた私は、そこから降りて来た人に気付いて目を見張った。



「坂下さん……?」


「倉橋、くん……」


お互い驚いたようにしばらく見つめ合っていたが、私はインターホンを鳴らしていたのがもしかしたら陽介ではなかったのかもしれない……と、今更ながら気付いた。


途端に気が抜けたように、その場にふらふらとしゃがみ込む。
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