ランデヴー
彼はそのまま私を部屋まで連れて行くと、壁に手を彷徨わせて部屋の電気をパチッと点けた。


明るくなった室内を目の前に一瞬沈黙し、そしてポツリと呟く。



「これはまた……酷いですね」



倉橋君がそう言うのも無理はない。


昨日着ていたジャケットは脱ぎ散らかしたままだし、ビールの缶があちこちに転がっている。


カバンの中身は散乱し、暗がりの中を這いずり回ってあちこちにぶつかったせいか、物が倒れたり動いたりしていた。



「とりあえず……着替えた方がいいと思います。俺はキッチン使わせてもらいますんで」


倉橋君はそう言うと、さっさとキッチンの方へと姿を消した。


そのすぐ後に「え、何か水浸しなんですけど……」と呆れたような声が聞こえてくる。



そう言えば、さっき水をこぼしたまま放置したままだったと思い出す。


私はそれに、聞こえないふりを決め込んだ。
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