ランデヴー





陽介の嫉妬を知ってから、私は陽介がいる所ではあまり倉橋君とは話さないようにしようと思った。


もちろんそんなこと陽介は望んでない。



でも、不安材料になるようなことはなるべく避けたいと思うのが女心というものだ。


陽介が余計な気をまわさなくて済むように、他の誰でもない私自身がそうしたいと思った。



でも――。


倉橋君は既にすっかり私に懐いてしまっているようで、普段通り話しかけてくる。



「坂下さん、チョコ食べますか?」


と言いながら、甘い物が大好きな私に新発売のチョコを差し出してくれたり。



「あ、この曲いいですよね。坂下さんて、音楽どういうの聞くんですか?」


と、かかっているラジオをネタに話しかけてきたり。


人懐こい笑顔でそんな風に話しかけられたら無視する訳にもいかず、私は当たり障りなく返事をしていた。
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