ランデヴー
「じゃぁ……。俺、帰りますね」


倉橋君はそう言って、その場に流れる空気を断ち切るかのように立ち上がった。


そして両手を上にあげると、「うーん」と伸びをする。



「ごちそうさまでした。また明日、会社で会いましょう」


そう言って、魅力的な顔でニッコリと笑う。


それはいつもの倉橋君と同じだった。


何事もなかったかのような、ポーカーフェイス。



私は1度瞳を伏せて息を吸い込むと、同じように立ち上がった。



「うん。また明日、ね」


何事もなかったかのように笑みを浮かべ、明るく振る舞う。


彼がそうするならば、私もそうするべきだと思った。



私達はそうして別々の方向へ向かって歩き出す。


ただの先輩と後輩として、この先も向き合っていけるように。


お互いの気持ちを思いやりながら。
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