ランデヴー
倉橋君と2人でいる所を社内の人間に見られると、必ずと言っていい程2度見される。


その行動は、女性である程顕著だ。


「あ、倉橋君だ」と嬉しそうに声を上げる女の子達が私の存在に気付いて「あ……」と落胆の色を見せることにも慣れないし、何だか申し訳ない気持ちになる。



そんな肩身の狭い思いを避ける為に、私はそれなりの努力をしてきた。


それをこんなにもあっさりとぶち壊されては困る。



でも倉橋君はそんな私の気持ちなど知る由もなく、首を縦には振ってくれない。


それどころか、私の顔を見つめて「どうしてですか?」と眉をひそめ、まるで捨てられた子犬のような目で見てくる。



私は倉橋君のその目に弱かった。


何だか自分が悪いことをしているような気分になってしまうのだ。



「もう移動するの面倒だし、ここに置いて下さいよ」


コップに口を付けながらそう言う倉橋君に、結局私は何も言えずに俯いた。


倉橋君は何も言わなくなった私の態度を肯定と受け取ったらしく、普通のテンションで話しかけてくる。
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