天神学園高等部の奇怪な面々ⅩⅥ
いつの間にやら、夕闇が迫り始めていた。

「修行も終わった事だし、そろそろ帰っかぁ」

「帰ろー」

龍太郎の背中で拳を突き上げてはしゃぐ阿行。

空手着から制服に着替える為、龍太郎は校舎に入り、廊下を歩く。

「あー腹減ったなぁ」

「たろたろ、ファミチキ食べたい」

「そういうのは、わたるんにでも頼みな」

「たろたろ買ってくれないの?」

「生憎と俺ぁ貧乏なんだよ」

「冷やし担々麺は?」

「だから寒い時期は売ってねぇっての、わたるんに買ってもらえ」

「うん」

背後で阿行が頷く気配。

「腹減った時に美味いもん買ってもらうのは嬉しいよなぁ」

「うん…」

背後で阿行が頷く気配。

「それが自分の好物だったりした日にゃ、尚更だよなぁ」

「……」

背後で阿行が頷く気配。

……廊下の窓から差し込む夕闇は、どす黒い血のような色だった。

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