琥珀色の誘惑 ―日本編―
「舞! お前は、何時だと思ってるっ!」

「お、お父さん。お、おかえりっ。あ、ただいま、かな? 今日は……早いんだ、ね」


舞は愛想笑いをしながら父に返事する。

父が顔を見せた途端、遼は部屋に引っ込んだ。


舞の父、月瀬暁(つきせあきら)は経済産業省の外局と呼ばれる資源エネルギー庁に勤めていた。
毎日八時までには帰宅し、舞の門限を厳しく管理している。
父の仕事の詳細は判らないが、遅くなると言った日は必ず午前様だった。


これまでは父が不在でもちゃんと門限を守っていた。

それが今日に限って……舞は、心の中で舌打ちしたい気分だ。


「全く、なんということだ。こんな日に限って、お前は……」

「まあまあ、今日からハタチなんだからさ。少しは大目に見てよ。ね、おとーさん」


舞は自分と高さの変わらない父の肩を、チョンチョンと叩いた。


「バカモノ!! ふざけとらんで、さっさと来るんだ!」


そう言うと父は舞の手を引き、リビングに引っ張って行かれたのだった。


「ちょっ、ちょっと、何?」


リビングは煌々と電気が点っている。それはいつもの二倍増しの明るさだった。


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