琥珀色の誘惑 ―日本編―
ようやく決まった花嫁の素顔を、彼は幸運にも写真で見る事ができた。

母と同じ、日本人共通の象牙色の肌。真っ直ぐな黒髪。黒曜石のような瞳をキラキラと輝かせ、ピンク色の花の下で満面の笑みを浮かべる少女がそこにいる。


『この娘は、あなたの妻になるべく、極めて清白に育てられます。あなたも、夫に相応しい立派な男性になってください』


その時、ミシュアル王子は母の言葉を厳粛に受け止めた。

途中、王太子になったことで、長老たちから婚約破棄を迫られたこともあった。
だが、彼にとって妻と定めた女は舞以外にはいない。


しかし――。



ミシュアル王子はベッドから離れると静かに口を開いた。


「どうやら、思い違いをしていたらしい。婚約を破棄する。舞――君は自由だ」


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