琥珀色の誘惑 ―日本編―
本来、王太子の妃には、クアルンの王族に繋がる娘か、イスラム国家の王女や有力者の娘が選ばれる。
五歳までには第一夫人が決められ、状況に応じて結婚の儀式を執り行う。

クアルンでは女性が九歳になれば結婚は可能で、男性は定められていなかった。

ミシュアル王子が王太子になったのは今から五年前、二十三歳の時だ。

父、カイサル・ビン・イーサー・アール・ハーリファ現国王が、実兄の病死により即位したからである。

カイサル国王がミシュアル王子の母と知り合った頃、王位継承権は第二位だった。

先王には息子がひとりいた為、王弟に王位が回ってくることはない、と思われていた。

そのひとり息子の事故死が先王の病気の原因とも言えよう。


二十九年前、カイサル国王には三人の夫人に産ませた五人の娘がいた。
そして、日本人女性を第四夫人に迎え、カイサル国王はようやく息子を得たのである。

ミシュアル王子の母は合計三人の息子を産み、当然、宮殿内で彼女の力は強くなっていく。
そして彼女は、第一王子の妻に日本人女性を希望する。
一族の長老たちがそれを認めるまでに数年を要し、結果、ミシュアル王子の婚約が決まったのは彼が十三歳の時だった。


< 90 / 154 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop